登場人物
ヴィラル
(エンキドゥドゥ=エンキと略)
シモン
村人の少女
少女の母
反乱軍(村人、野良獣人)
大グレン団の面々
○ 岩山に隠れた村(昼)
T『テッペリン攻略の後(のち)――』
シモン(OFF)「お願いだ、みんなのた
めにも…」
新しいグレン団(軍の前身)と反乱
軍が交戦している。
銃撃と爆撃の轟音。振動が岩山を揺
らして砂煙を上げる。
その岩陰に母と少女が抱き合って
震えながら身を隠している。
すぐ後ろにはグレンラガンの足。
村人A「俺たちは町には移らねぇっ」
村人B「私たちは私たちでひっそりと暮ら
したいだけなの!」
獣人ガンメン「俺らの居場所を奪いやがっ
たクセに!」
グレンラガンへ一斉に銃口を向け
る獣人ガンメンと村人数名。
困惑気味に佇むグレンラガン、そし
て言葉を失い曇るシモンの表情。
その時、グレンラガンに急襲するエ
ンキ。それを受け流すグレンラガン。
シモン「!? ヴィラル…!!」
ヴィラル「貴様には何も見えないのか…シ
モォオオオオオオオン!!!!」
エンキの刃とグレンラガンのドリ
ルがぶつかり合い、火花が閃光とな
って瞬く。溶白。
タイトル『とある獣と人の狭間に』
体ごと弾かれて間合いを取る2人。
シモン「待て、ヴィラル!」
ヴィラル「問答無用っ」
シモン「ッチィ!」
飛び込むエンキに迎え撃つグレン
ラガン。
刃を構えて踏み込もうとするが右
足下の岩陰に母娘の姿を見つけて
足を引き、バランスを失うエンキ。
シモン、ハッとしてその手を止める。
が、グレン団支援機からの容赦無い
銃撃で跳ねる様にフッ飛ぶエンキ。
ヴィラル「ぐぁあああああああっ」
壮絶に機体が叩きつけられるとコ
クピットから投げ出されるヴィラ
ル。
ヴィラル「う…く……」
ぼやけた視界に駆け寄ってくる少
女の姿が見える。だがすぐに意識は
暗闇に覆われてしまう。
ヴィラルM『また…また真っ暗だ……』
すると視界の一点から光がフラッ
シュ。その中に薄っすらと映るカミ
ナの自信に溢れる立ち姿。
ヴィラル「!?」
ガバッと起き上がるヴィラル。
目の前にはおにぎりのような物を
頬張りながらヴィラルに水を掛け
ているシモンの立ち姿。
ヴィラル「(間合いを取って腰にある剣の
柄を握り)きっ…サマ!」
その場にドカリと座って更にニア
お手製の弁当を頬張るシモン。
ブータがシモンの肩に飛び乗る。
崖を抜ける風の音と鳥の鳴き声が
響く。銃撃や爆音はもう聞こえない。
ヴィラル「一体何を考えている!?」
シモン「お前こそ何を考えてるんだ」
ヴィラルに水筒を投げるシモン。
即座にそれを斬り落とすヴィラル。
シモン「(自分の水筒を一気飲みして)お
前とはもう戦う理由なんて無いだろ?」
ヴィラル「…貴様は頭まで平和ボケしてい
るようだな」
シモン「(立ち上がりながら)本当の平和
はこれからさ」
シモン「(薄っすら見える月を仰いで)こ
の世界は新たな光を得て生まれ変わる」
ヴィラル「光…だと? この世界の何処
に光がある!? 仲良しこよしの貴様
らの巣へ押し込められた者に、溢れた者
に、獣人に…俺には、光など無いっ…必
要あるものかっ!!」
カミナシティで呑気に笑う人々、地
下に帰りたくて強制を恐れる人々、
そして傷ついた獣人たちの姿、ヴィ
ラルの恨めしげな表情。
シモン「ヴィラル…」
ヴィラル「“奴”もそうだった…光も強す
ぎれば闇と同じだ。目を眩ませるだけ
眩まして勝手に消えた…俺にとって光
とはこの血を帯びた剣の鈍き光のみ。そ
れ以外には何も無い!」
剣を顔の前に掲げて不気味に笑う
ヴィラル。
シモン「…たしかにアニキはもういない。
だが、俺はここにいるぞ、ヴィラル」
ヴィラル「ナニ?」
上着を羽織ってグレンラガンの方
へと歩き出すシモン。
シモン「周りが暗ければお前が輝けばいい。
お前に光が無いのなら光を“反射”させ
て輝けばいいだけだ。結局、オレもまだ
…“鏡”でしかないけどな」
自分の頭を寂しげに撫でるシモン。
ヴィラル「…」
シモン(OFF)「ヴィラル!」
シモンを睨むヴィラル。
シモン「(コクピットに足を掛けて)一緒
に来ないか? カミナシティへ!」
ヴィラル「(腕を組んで)――倒す」
シモン「…そうか」
去って行くグレンラガン。後を追っ
て去り行く隠れていた兵隊たち。
それを強く睨みつけるヴィラル。
ヴィラル「貴様なら分かるハズだ。闇から
光を得た貴様なら。…まぶしくて、鬱陶
しい、その“光害”を」
ヴィラルの元に駆け寄る少女。
少女を睨みつけるヴィラル。
そんなヴィラルにもじもじしなが
ら後ろ手に隠していた(ニアの瞳を
思わせる)一輪の花をずいっとヴィ
ラルに差し出す少女。
少女「あ…ありがとう!」
にっこりと微笑む少女。
ヴィラル、その笑顔を見ると険しか
った表情が穏やかになる。
ヴィラル「…ああ」
もう一度微笑んで母の元へと走っ
て行く少女。
母も微笑んでお辞儀をすると仲良
く去って行く。
ヴィラル、その花を見つめながら岩
山を登って行く。
ヴィラル「こんなにも重てぇ花もあったモ
ンだな、ああ? シモンよ」
そしてカミナシティの方を見据え
て立ち止まる。
ヴィラル「だが、もしかしたら貴様なら…」
その時、自分の心の闇に光がフラッ
シュするのを感じるヴィラル。
ドクンと鳴動する胸を手に持つ花
ごと鷲掴みにする。
フッと笑うヴィラル。
目を閉じて踵を返すと散った花が
風に乗って舞って行く。
花の行く先には発展途中のカミナ
シティがそびえ立っている。
ヴィラル、残った茎を捨て、再び力
強い眼で前を見据えて歩いて行く。
× × ×
大人と呼ぶにはまだ早いが確実に
成長を遂げたシモンの背中に先程
の花びらが舞う。
更にシモンを笑顔で迎え入れる仲
間たちの間を舞って、その先に待つ
ニアの頬の横を通り過ぎて行く。
ふわっと柔らかく微笑むニア。
ニア「カミナさんの像をイメージだけでデ
ザインしてみました!」
そこには、サタデーナイト・フィー
バーの格好をしたアフロな濃ゆい
おっさんの像が立っている。
シモン「全っ然違ぁあああああうっ」
笑い合うシモンとニアのあたたか
い表情。
T『人類殲滅システム発動まで、あと――』
■第二部END■
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