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登場人物
ニア
キタン
ダヤッカ
リーロン
ヨーコ
大グレン団の面々
○ ダイガンザン艦内・台所(午後)
唐突に振り下ろされた包丁で動物
的な何かの肉が真っ二つに切り裂
かれる。飛び散るその体液。
薄暗い台所から不規則で水気を帯
びた包丁のリズムが聞こえてくる。
無表情でぼうっと佇みながら腕だ
けを力強く振り下ろし続けるニア。
やがては鼻歌交じり。
部屋の物陰からこっそりとその様
子を伺うキヤル、キノン、キヨウ。
キヤル「この様子だと兄貴たちみんな殺さ
れちゃうんじゃ…」
キノン「ど、どうする?」
キヨウ「(苦笑いで)とりあえず…見守り
ましょう」
切った肉片や野菜を鍋にブチ込む
ニア。水分が一気に蒸発する音が響
いて鍋から火が上がると不敵に笑
うニアの表情を不気味に照らす。
タイトル『死んだら花実は咲きませんっ』
○ 晴天の荒野
遠く山間にダイガンザンが見える。
そこから鳥たちが飛び立つと日の
傾き始めた湖の方へと囀りながら
羽ばたいて行く。
青天の下で風になびく『第一回ガン
メン改造優先権争奪大食い大会』と
乱暴な字で書かれた旗。
太陽光の照らす中、荒野にポツンと
置かれたテーブルの前でやたらか
しこまって座っているキタン。
その横に一本の列で並んでいるダ
ヤッカ、そして他の面々(アイラッ
ク、キッド、ゾーシィ、マッケン、
バリンボー、ジョーガン辺り)が顔
を強張らせながら座っている。
流れ出てくる汗が脂汗に見える。
キタン「何故だ…」
回想――
× × ×
ガンメン整備室で掴み合っている
キタンとダヤッカ。それを取り囲ん
でやんやと騒ぐ他面々。それを呆れ
た顔で眺めているレイテ。
キタンN「こうなって」
2人の間に割って入るニア。
キタンN「こうなって」
「そうだ!」と云う満面の表情を浮
かべ手を叩くニア。
× × ×
ニア(OFF)「お待たせしましたー☆」
ズモモッと皆の前に積まれた料理
っぽいけど料理じゃない塊の山。
キタン「(頭を抱えて)何でココに結びつく
んだぁああああああ!?」
横には泣いているダヤッカの姿。
ロン「(ビーチパラソルの下でくつろぎな
がら)平和主義で解決しようってニアの
計らいじゃないの」
キタン「これが平和なのか? あーアレか、
喧嘩両成敗ってヤツか!?」
ニア「さぁーさぁみなさん!」
遠くダイガンザンに子供たちと整
備員たちのワイプ。『留守番』
T『本当に平和な人たち』
ニア(OFF)「今日は真剣勝負をしてもら
いますよ!」
更に向こうの山の奥からグレンラ
ガン、シモン、ロシウのワイプ。『偵
察&食料調達』
ニア「けれどいつもとは違います。思い切
り食べて、楽しんで、戦士の休息です!
戦いを忘れて一息ついてくださいね☆」
キタン「(深い溜め息)溜め息吐き過ぎて息
が絶えるってことはねーよな…」
ニア「さぁ準備は宜しいですか!?」
生唾を飲むキタン、まだ死にたくな
いと泣き叫ぶバリンボーとジョー
ガン。恐怖に震える他面々。
T『巻き添え』
ダヤッカ(OFF)「キタン」
キタン「ああ?」
ダヤッカ「勝負と名が付くからには…これ
で決着を付けるしかねぇな」
キタン「…おお! 上等だコラァ!!」
ニア「レディ…ゴー!」
次の瞬間、壮絶な音を立てて一斉に
顔をテーブルへ打ち付けるみんな。
キタン「瞬殺かー!? お前勝負だって言
ったそばから…」
ダヤッカ「(真っ青で無表情)いや、キタン、
漢にだって不可能はある」
ニア「どうしたのですかみなさん?」
キタン「(あたふたと)ああいやぁ…この日
差しでな! 疲れがたまった所に熱で
ヤラレちまったんだよ」
ハッとするニア。
ニア「私ったらそんな気遣いもできず…す
みません」
すごすごと料理を下げて行くニア。
それを見てホッとするキタン。
キタン「いやいいんだよそんな、ありがと
うよニア。いやぁ惜しいなぁ。食べたか
ったナァその料理」
ニア「(目がキラッと光り)…ホントです
か?」
キタン「ええ!? いや…」
ニア「(後ろを向いて腕を動かし)それなら
…ふふ、これで……」
ゴリゴリと料理を擂る音が響く。
ニア(OFF)「胃に優しく食べられます
よー!」
何色とも云えぬ沸騰した特大なス
ープがキタンの前にドンと置かれ
る。他の面々の前にも。
キタンを睨みつける一同。
キタン「恨むなら俺を恨め。この世に悔い
は残すな」
ニア「それじゃ改めて…」
ニア(OFF)「ゴー!」
一斉に死に物狂いでスープを掻っ
込む一同。さながら戦争で戦ってい
るかのごとく獣の目をし、疲弊して
行く。堪えられず次々と仲間が倒れ
て行く。それを横目にしながらも食
べ続けるダヤッカとキタン。
そして…ダヤッカも落ちる。
キタン「ダヤッカ!」
ダヤッカ「(キタンのセリフに被せて)キタ
ン、俺は音を上げた時点で漢として死ん
だ…だからお前は漢として生き、生物と
して死ね!!(カッと見開く目)」
キタン「…クッ」
ニアの方を見るキタン。ニアは山盛
りに積まれた残りの料理を前に「ま
だこんなにあるのに〜」といった顔
でキタンを見ている。
キタン「俺に…任せとけぇええええっ」
ヨーコ「(ロンの隣でくつろいで呆れなが
ら)それでいいんだ…」
キタン「うぉおおおおおおおおおおあああ
あああああああああっ」
最後のひと口を流し込んで咆哮。パ
ンパンに張れた腹が揺れる。
その瞬間、キタンのバックに特撮の
爆破の様な大爆発。
ヨーコ「(飲み物吹いて)爆発したー!?」
ロン「いや、これは…敵襲よ!」
荒野の地平線から陽炎のように揺
らめいて見えてくる敵ガンメンの
一団、10体。
ロン「(服を着直して)主戦力がいない所を
狙ってくるとは敵もバカじゃないのね」
ヨーコ「(ライフルを構えて)早くニアを連
れて逃げて…ニア!?」
誰よりも前に出て立ちはだかるニ
ア。容赦無く弾が撃ち込まれてくる。
それでもニアはひるまない。
ニア「私たちはしっかりと食べました。そ
れは“生きる”ということなのです。そ
のために犠牲になった者達への生きて
行くという宣言なのです! 宣言した
以上、それを守って私たちは明日に向か
わねばなりません。死んだら花実は咲き
ませんよっ」
ニアの言葉に笑みを浮かべて死に
掛けていた漢たちが腹を抱えて
次々と立ち上がって行く。
ロン「(通信機に向かって)ダイガンザン、
至急応援を…」
キタン(OFF)「待て!」
キタンの方を向くヨーコ、ロン。
キタン「俺たちだけで構わねぇ。見たカン
ジ数は五分と五分。つまり俺らの十割勝
ちだ! 俺らを誰だと思っていやが
る!! 天上天下唯“団”独尊、泣く子
も拳を突き上げる、天を突く牙、大グレ
ン団だっ」
次々と自分のガンメンに乗って身
構える漢たち。
キタン「悪いがココは行かせてもらうぜ。
あんなザコなら休息も同然。お前は俺ら
の帰る場所だ。その内シモンも来るだろ。
大人しくそこで待ってな!」
ニア「…はい!」
一同、弾幕を掻い潜って敵へと向か
って行く。
ダヤッカ「(振動で青ざめて口を膨らます)
うげっ、出るかもしれねぇっ」
キタン「吐く前に全部飲み込んじまえばい
いんだよっ」
一同「うぉおおおおおおおおおっ」
――溶白。
× × ×
夕焼け。静かになった荒野。
佇むガンメンたち。
ロン「終わったわね…」
キタン「ああ、終わっちまった…」
ロン「(ハッとして)! …出ちゃったの
ね」
振り向くガンメンたちの顔は夕日
に映えてどこか爽やかで笑ってい
るように見える。
ガンメン一団はそのまま日の落ち
る湖へと向かって歩き出す。
ニア「どこへ行かれるのですか?」
ロン「戦いを終えた戦士たちが湖へ命の…
そして機体の洗濯に行くのよっ(涙)」
ニア「みなさん明日に向かってしっかりと
生きて行くのですね…。私は戦士じゃあ
りませんし、戦いは無ければそれが一番
良いし、増しては戦う力もありません」
ヨーコ「ニア…」
ニア「だからせめて…私は私のできること
を全力でがんばりますよっ☆」
鼻息荒く包丁を持った腕を捲くり
上げるニア。
一同、それを見てビクッとする。
一同「シモンカムバァアアアック!!!!」
× × ×
テーブルの前で腹をパンパンに膨
らませて悦楽の表情を浮かべてい
るシモン。
そんなシモンを背に青ざめた顔で
頭を抱え震えているロシウ。
ロシウ「とめどない“波”がやってくる…
嗚呼、城門が突破されてしまうっ」
等とうわ言をブツクサと漏らして
いる。
■END■
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