登場人物
大庭詠美(18)
猪名川由宇(20)
長谷部彩(18)
千堂和樹(19)
九品仏大志(19)
○ 詠美の家の前(早朝)
由宇OFF「同人描いてる奴は人を愛したらア
カンな」
詠美OFF「……どうしてよ」
明るくなり始めた空、囀る小鳥。
新聞配達のバイクが走り抜けて行く。
勢い良く門が開くとそこから長谷部彩
(18)が飛び出してくる。
一冊の本を胸に抱え猛然と走って行く。
タイトル『あい・えぬ・じぃ』
○ 詠美の部屋(同刻)
薄暗い中、様々な画材や資料、ドリンク剤
のビン等が散らばっている。
積み上げられたコピー誌の山。
その中で座机に向かって俯きながら力無
く芯の無くなったホチキスを弄んでいる
大庭詠美(18)と、座った目で出来上がった
本を整えている猪名川由宇(20)。
由宇がその本を机に置くと、やつれた顔を
見合わせる2人。
にまっと笑ってハイタッチ!
が、即座に項垂れる。
詠美「(ドリンク剤を手に取り)ねえ、だからどう
してよ」
由宇「(ドリンク剤の蓋を開けながら)こうやって
ウチらに余計な仕事が増えるからや」
グイッと一気に飲み干す2人。
悦楽とも苦悩とも云えない表情を浮かべ
て暫しの沈黙。
詠美「(にやりとして)なによ、『余計』なこと吹
き込んだのはパンダでしょお」
由宇「(気だるくもたれ掛り溜め息をして)…彩っ
ちから珍しゅう連絡あって遠く駆り出されて
来てみれば何や」
仰向きに寝そべる由宇。
由宇「『同人で愛を伝えたい』何て大層なことぬ
かしよるからホンマに……」
詠美「(手元の本を手に取り)突発告白本!」
フッと笑う2人。
詠美「今までの彩からは考えられないね」
由宇「そやなぁ。愛は人を変えるっちゅうか狂わ
すっちゅうか……」
× × ×
汗を流し疾走する彩、どことなく笑顔だ。
由宇OFF「どーにかなってまうモンなんやなぁ」
× × ×
詠美「(寝そべりながら)あー……」
同じ格好で寝ている2人。
詠美「恋、しちゃったんだね」
フッと笑う由宇、暫しの沈黙。
詠美「(ガバッと起き上がり)だ、大丈夫かな」
由宇「(あくびしながら)大丈夫やって。心配せん
でも、向こうも脈アリなんやから」
詠美「いや、そうじゃなくて……それもそうだけ
ど……」
本を見つめる詠美。
由宇「(それを尻目に)別に慣れないパロディ描い
たからって無理してるわけちゃうで。彩っちな
りの持ち味を出してかつ、その熱い想いっちゅ
うやつをしっかりと注ぎ込んどる。だいいち、
生半可なモンやったらさらさら手伝う気なん
かあらへんかったわ」
詠美「うん……」
由宇「(ゆっくりと起き上がって本を手に取り)せ
やけど、これ手伝ってくれ云われた時に見せら
れたコンテで、情熱っちゅうモンを奮い立たせ
られてもうたウチらが今こうしてるワケや」
顔を見合わす2人。
由宇「(満面の笑みで)信じたったらええやん!
頑張った彩っちも、ウチら自身もな」
きょとんとする詠美。
じわじわと笑顔になっていく。
T『何百と描いたデッサンも』
由宇「彩も今日ら『オトナ』になるんとちゃうか
ぁ? まァおこちゃま詠美には分からん話か」
詠美「むっかぁー! 万年幼児体型がナニちょお
しこいてくれちゃってるワケぇ!?」
由宇「なんやと!?『万年』て、夏にちちふくら
んでくるモンやったらこっちかて苦労せぇへ
んわ!(詠美の胸を息荒く鷲掴み)アンタはこ
の栄養を頭に回さんと、高校五年生になっても
知らんでぇ」
詠美「(涙ぐみ)ふみゅっ! パンダがにんげんに
せくはらするぅっ」
……等とじゃれ合う(?)2人。
○ 和樹宅ドア前
雲の切れ間から僅かに朝日が差し込む。
汗をダラダラと流し息を切らしている彩。
ドアをキッと見つめインターホンに手を
伸ばす。
T『描き潰したペン先の数も』
ドアを開ける千堂和樹(19)。
彩「(戸惑いながら)あ、あの……」
部屋の奥に九品仏大志(19)の姿が見える。
彩、ハッとして一目散に大志の下へ。
T『空っぽにしたドリンク剤や』
大志に詰め寄って何やら必死に訴えかけ
る彩、スッと本を差し出す。
T『ビタミン剤のビンの数も』
無表情でそれを受け取ってページをめく
る大志、黙々と読む。
不安げにその様子を見つめる彩。
T『全ては……』
目をつむり本を閉じる大志。
緊張して涙ぐみ息を呑む彩、大志にそっと
猫耳を付けられる。
戸惑いつつも大志を見つめる彩。
満面の笑みを返す大志。
T『この瞬間のために』
それを見て涙をこぼし喜ぶ彩。
大志に身を寄せる。
部屋の隅で困惑しながら頭を掻いている
和樹、微笑む。
× × ×
すやすや眠る由宇と詠美。
ラミカ大志『ちゃんと寝よう!』
○ 詠美の部屋・朝過ぎ
クッションを抱いて寝ている詠美。
由宇OFF「むにゃむにゃ……やあらへん!
起きんかーいっ!」
詠美をハリセンでどつく由宇。
飛び起きる詠美。
詠美「(眠気眼で)な、なによおっ!」
由宇「これ見てみぃ!」
由宇、詠美の鼻先に時計を突き出す。
詠美「(目を擦りながら)だから何よ」
由宇「(冷や汗をダラダラ流し)あと三十分ないし
でこみパが開場してまうんや」
詠美「はァ!? 何してんのよあんたぁっ!」
由宇「おんどれも余裕こいてスヤスヤ眠っとった
やろ大バカぁ!」
詠美「ど、どうすんのよおっ」
由宇「あんさん金ぎょーさん持ってんのやろ?
ほならハイヤーでもチャーターしぃ!」
詠美「はいやあって……何屋さんよぉっ」
……等とギャアギャア騒ぐ2人。
揉み合っている内にふと足下のコピー誌
の山を崩してハッとする2人。
2人「(青ざめてそれを見つめ)あ……」
× × ×
アクション仮面のポーズをとって高らか
に笑っている大志の後ろ姿。
その横で猫耳と尻尾を付けた彩が誇らし
げに同じポーズをとっている。
T『COMIC PARTY……i・n・g!』
了
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